情報操作と詭弁ー論点の誤謬

チューバッカの抗弁

情報操作と詭弁論点の誤謬論点回避チューバッカの抗弁

チューバッカの抗弁

Chewbacca defense

質問に対して意味不明な回答をすることで論点から逃げる

<説明>

「チューバッカの抗弁」とは、不都合な質問に対して意味不明な回答をして論点を回避するものです。映画『スターウォーズ』に登場するキャラクターのチューバッカ Chewbacca は知的生命体ですが、咆哮によって会話するので、一般の人間の質問に回答することはできません。狡猾なマニピュレーターは、意図的に意味不明な回答をすることで、理解不可能な状況を作り、論点を無効化します。彼らは人間の言語を話すものの、不当な文法や語用を用いてエキセントリックな会話を行い、コミュニケーションを成立させないのです。非や不明をどうしても認めたくない場合にしばしば用いられる手法です。

誤謬の形式

論者Aが論者Bに質問QAをする。
論者Bが「●×△◎■○▼☆◇♪」といった意味不明な回答をする。
質問QAが成立しない。

<例>

<例1>

先生:A君は算数が好きですか?国語が好きですか?
A君:先生、悪い冗談はやめて。僕はネットゲームが嫌いじゃありません。

<例2>

先生:社会の問題です。日本で一番高い山の名前を答えなさい。
B君:先生、他人に何か尋ねる時は「教えて下さい」と言うのが礼儀ですよ。

<例3>

警察官:ここは駐車禁止ですよ。すぐに車を移動してくれませんか。
ドライバー:Come on! 私を誰だと思っているの。金ならいくらでもある。

いずれも意味不明のハチャメチャな主張であり、質問に回答していません。

<事例1>ノドクロを一緒に食べましょう

<事例1>小泉進次郎環境大臣会見 2019/09/13

記者:原田義昭前大臣の発言について、原田さんは、原子力規制委員会の委員長が放出してもいい、安全基準に心配はないということを重ねておっしゃっていることを受けて、自ら議論に一石を投じる意図で発言をしたとフェイスブック等で説明されているのですけれども、大臣は昨日、被災者の心を傷つけたのであれば寄り添って謝罪をと言いましたけれども、原田前大臣の発言の正当性について、希釈して放出するということについてはどう評価されていますでしょうか。

小泉進次郎環境大臣:この問題というのは、昨日、私、小名浜に行って漁連の組合長ともお話をしましたが、今日に至るまで漁師の皆さんがどんな日々を過ごしてきたのかということに思いをはせなければ、発言はできないと思います。海をなりわいにしている方々が海に出られなくなるということがいかなることか。そして、出られても、試験操業という段階が続いていることも通常のことではありません。そして、そこまで来る過程の中で、一体どれだけ風評被害と実害を含めて被ってきたのかということを考えれば、慎重に慎重を重ねて、何よりも浜の皆さんのことを思い、福島の皆さんのことを思いながら対応しなければいけない事柄だと思っています。なので、まずはお会いしに行きました。そうしたら、いいことを聞きました。今、福島の試験操業で何が捕れますかと言ったら、ノドグロが捕れると。ノドグロは私も大好きですけど、ノドグロが捕れるんですか、福島で。そうなんだよ、最近ノドグロが捕れるんだよと。じゃあそれ、今度一緒に食べましょうと、そういう話で明るくなりましてね、今度、環境省にも来てくれるというので、その皆さんと一緒に部屋でノドグロを食べられればなと思いますし、福島の海産物というのはこんなに魅力があるよと、そういったことも。安倍内閣の全閣僚は復興大臣だと思えと。私は、まさにその通り、復興のためにプラスになることは何でもやります。副大臣と政務官の受け止め、これは一緒にチームとして、環境省が今までやってきた取組を一緒になってさらに国内外に発信をして、そして目の前の課題を一つ一つ前に進めて、よくコミュニケーションを取って、私が引っ張っていくというのではなくて、私を支えてもらいたいと、そんな気持ちでいっぱいです。

小泉大臣は福島第一原発処理水の科学的評価に関する記者の質問に対して、ノドクロという[薫製ニシン]を意味不明に用いることで、見事に何も答えませんでした。

<事例2>不倫疑惑のママ議員

<事例2>山尾志桜里議員・衆院選立候補決意会見 2017/09/22

記者:倉持弁護士はまだ政策ブレーンの役割をなさっているのですか。

山尾志桜里議員:私自身はとにかくこういった状況で地元に戻って地元の一人一人の支援者の皆さんに繰り返しになりますけれどもお詫びと感謝と決意、これをひたすら訴えることに集中したいと思っています。

倉持弁護士との不倫疑惑騒動の渦中にあった山尾議員は、衆院選立候補決意会見で倉持弁護士との関係を問われましたが、その内容とはまったく関係のない意味不明な発言で論点を回避しました。

まず、大前提として、国会議員の立候補者が公職選挙法で指定されていない情報を開示する義務はありません。誰が政策ブレーンを務めようが、立候補者の勝手です。但し、当時の山尾議員は「清廉潔白な働くママ」という属性を武器しており、安倍総理に対しても「ママたちは気分では騙されない」などとヒステリックに人格攻撃を繰り返していました。選挙を前にした山尾議員にはどうしても論点回避したい理由があったのです。

<事例3>国会審議中にコーヒーブレイク

<事例3>参・予算委員会 2012/02/06

礒崎陽輔議員(自民党):1月31日の本予算委員会で、田中防衛大臣が突然行方不明になりまして、15分間委員会を空席し、与党の理事によって本院の議員食堂で発見されたと、そういう前代未聞の不祥事がありましたけれども、田中防衛大臣、議員食堂でコーヒーを飲んでいたのは事実ですね。

田中直紀防衛大臣:委員会中に席を外して時間が掛かりましたことを心からおわびを申し上げたいと思います。1月31日に、徳永理事にお話をして席を外したところでございますが、大変風邪ぎみでございましたので、その薬を飲んで戻ろうかと、こういうふうにいたしましたところ、大変時間が掛かってしまったというのは、大変私の不徳の致すところでございます。1日前にこの参議院の医務室で薬をいただいたわけでありますが、自分で保持するところを持たしておったということで、一つは場所を探すということがございました。もう一つは、私自身がその薬を飲んでトイレに行った時間が掛かりましたので、大変申し訳ないと思います。コーヒーにつきましては、2階に行きましたのは、薬を飲むために、水があったわけでありますが、私は日ごろの癖で、あそこに行きましたら、ただ座るんではなくてコーヒーを頼むという精神でございました。飲んだかどうかは私も分かりませんが、今後は、この委員会があります、そしてまた在籍期間は国会内ではコーヒーを飲むことはしないという決意でこれから臨みたいと思うところでございます。

田中大臣は自身のハチャメチャな意味不明の行動をハチャメチャな意味不明の根拠で弁明しました(笑)