メディア・リテラシーの基本概念

メディア・リテラシーの基本概念

メディア・リテラシーの基本概念 Basic concepts

情報の発信によって私たちを騙そうとする人物を【マニピュレーター manipulator】と言います。私たちがマニピュレーターに騙されないためにはどうすればよいのでしょうか。それは、私たちがマニピュレーターに騙されるメカニズムをよく知って、その手に引っかからないことに尽きます。そして、この知識こそメディア・リテラシーに他なりません。

マニピュレーターが私たちを騙す方法には大きく3つあります。それは、【論理 logic】を悪用して私たちを騙す【情報操作 information manipulation】【倫理 ethics】を悪用して私たちを騙す【印象操作 impressive manipulation】、そして【心理 psychology】を悪用して私たちを騙す【認知操作 cognitive manipulation】です。これらは、それぞれ【詭弁 sophism】【ポピュリズム populism】【プロパガンダ propaganda】に対応します

  • 論理を悪用する情報操作詭弁
  • 倫理を悪用する印象操作ポピュリズム
  • 心理を悪用する認知操作プロパガンダ

これら3つの操作のうち、マニピュレーターが最も頻繁に使うのが、論理を悪用した情報操作です。ここでは、情報操作を見破るために有用となる論理に関する重要な基本知識を3つのトピックに分けて説明していきます。

まず<言論の基本概念>では、【文 sentence】【言説 statement】【主張 assertion】【命題 proposition】【論証 argument】といった、なんとなく知っていそうで正確には知っていない基本概念について説明します。これらを明確に見分けることで、問題の所在を明らかにすることができ、マニピュレーターに騙されないための重要なファースト・ステップとなります。

次に<演繹と帰納>では、論証の2つの異なるタイプである【演繹論証 deductive argument】【帰納論証 inductive argument】について説明します。この2つの論証の意味するところを明確に理解することによって、論証の目的と限界を把握することができます。

論証の論理的な誤りのことを【論理的誤謬 logical fallacy】といいます。マニピュレーターは論理的誤謬を意図的に提示して私たちを騙すのです。<論理的誤謬>では、論理的誤謬の種類について系統的に紹介します。論理的誤謬を類型でとらえることによって、論証のどの部分に問題があるのか、誤りの特定をより論理的に行うことが可能となります。

さて、日本を含め東アジアのマニピュレーターが頻繁に使うのが、倫理を悪用した印象操作です。欧米と違い、日本を含めた東アジアの大衆はいとも簡単に正義を振りかざす印象操作に騙されてしまいます。<論理・倫理・美>では、人間の価値判断の基準である【論理 logic】【倫理 ethics】【美 esthetics】について概説します。マニピュレーターは、これらの価値観を意図的に混同させて私たちを騙すのです。

非常に狡猾なマニピュレーターが使うのが、人間心理を悪用した認知操作です。<認知バイアス>では、人間心理の選好・過剰評価・錯覚の傾向である【認知バイアス cognitive bias】【記憶バイアス memory bias】【社会バイアス social bias】について概説します。マニピュレーターは、これらのバイアスを意図的に発動させて私たちを騙すのです。

マニピュレーターに騙されないためには、以上の基本知識を十分に理解した上で、3編以降に示す各操作の具体的項目を知識にすることが重要です。