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メディア・リテラシー

私たちは、この世界に存在する様々な【情報 information】を基に個人の価値判断を行うことで生きています。

私たちが手にする情報には、私たち自身が個人の感性・悟性・理性により認識して獲得する【一次情報 firsthand information】、他の誰かが認識した一次情報を当人から聞いて直接的に得る【二次情報 secondhand information】、一次情報を他の誰かからまた聞きして間接的に得る【三次情報 thirdhand information】があります。現代の情報社会において、私たちが手にするほとんどの情報は、情報提供者である【メディア media】を通して得られる二次情報あるいは三次情報といえます。

私たちが二次・三次情報を基に個人の価値判断を行う場合には、一次情報自体が正しいかどうかに加えて、メディアが一次情報を正しく伝えているかどうかを検証することが必要になります。この検証を怠ると私たちは誤情報や不確定情報を基に誤った価値判断や根拠のない価値判断を行ってしまう可能性があります。【メディア・リテラシー media literacy】とは、この検証を行うために必要な知識に他なりません。

私たちをとりまくメディアには、【メインストリームメディア mainstream media】とも呼ばれる大手の新聞・雑誌・テレビ・ラジオ等の【マスメディア mass media】、オンラインメディアやニュースサイト等の【インターネットメディア internet media】、個人が発信するブログやSNS等の【ソーシャルメディア social media】などがあります。メディア・リテラシーは、これらのメディアの情報の検証に加えて、配偶者・親族・友人・同僚・取引先・顧客など、自分以外の人物から得られるすべての二次・三次情報の検証に有効です。論理的に言えば、私たち個人にとって、すべての情報提供者は「メディア」に他なりません。そして更に論理的に言えば、情報社会における情報取得に欠かせないメディア・リテラシーこそ、言論はもとより、ビジネスや社会生活に必要なすべての知識の中で最も優先して得るべき基礎知識なのです。

新聞・テレビを過信する日本国民

日本は世界の国々の中でも新聞・テレビを異常なまでに強く信頼する国民性を持っています。実際、日本国民はしばしば新聞・テレビの論調一色に染まって一方向に暴走していますが、そのことを示す興味深い客観的調査結果があります。世界各国の国民の価値観を数年毎に測定する国際プロジェクトである世界価値観調査 WVS=World Values Surveyでは、日本を含めた世界各国の国民が持つマスメディアに対する価値観を調査しています。 最新のとりまとめは2017年~2020年に行われたものであり、日本では2019年に調査が実施されています。

図-1は、各情報源を毎日利用する人の割合を日本・米国・世界で比較したものです。また図-2は、各国国民の政府への信頼度と新聞への信頼度(肯定的な回答の合算値)の関係、図-3は、各国国民の政府への信頼度とテレビへの信頼度の関係をプロットしたものです。

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図-1 各情報ソースを毎日利用する人の割合(世界価値観調査2017-2020)

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図-2 各国国民の政府への信頼度と新聞への信頼度の関係(世界価値観調査2017-2020)

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図-3 各国国民の政府への信頼度とテレビへの信頼度の関係(世界価値観調査2017-2020)

これらの図を見ると、日本は世界でも極端に「新聞とテレビを毎日の情報源として利用している国」であり、世界でも極端に「政府よりもテレビを信頼している国」であることがわかります。例えば、新聞を毎日の情報源とする米国国民は22.5%であり、その信頼度が29.5%であるのに対して、新聞を毎日の情報源とする日本国民は56.85であり、その信頼度は69.4%にのぼります。つまり、単純計算すれば、日本国民は米国国民よりも6倍(≒56.8/22.5×69.4/29.5)も新聞の影響を受けていることになります。日本国民の新聞・テレビとの付き合い方は世界的に極めて異常なのです。

国民のこのような新聞・テレビ好きの性向は民主主義の根幹をなす国政選挙での情報取得にも如実に現れています。次に示す各種調査の結果から、日本国民は投票にあたって新聞・テレビを最も参考にしていることがわかります。

 

「投票の参考にしている」ということは、投票行動への影響も少なくないと考えられ、このことはマスメディアが第四の権力としての潜在的な能力を持っていることの明証です。最近では新聞の代わりにインターネットを参考にする割合が多くなりましたが、その参考先のほとんどは新聞社のニュースサイトか新聞のニュースサイトを中心にリンクするポータルサイトであるため、情勢に大きな変化はありません。ちなみに、マスメディアが大々的にキャンペーンを行った劇場型選挙によって誕生した政権と言えば、ポピュリズム的な性向がしばしば指摘される細川政権・小泉政権・鳩山政権・小池都政であることに一定の留意が必要であると考えられます。