情報操作と詭弁 > 論点の誤謬 > 論点回避 > ヘッジの誤謬
Hedging fallacy
自説を否定する反証から逃げるため、自説を修正した上で修正していないように偽る
<説明>
「ヘッジ」とはリスク回避の行動を意味します。「ヘッジの誤謬」とは自己防衛のために、主張を偽って修正しながら騙し騙し追及を回避するものです。偽りを信用させる存在であるマニピュレーターは、自分の元の主張が偽であることを絶対に認めたくないため(=いわゆる「謝ったら死ぬ病」)、主張が反証される度に都合よく修正していきます。ただし、偽の主張を真の主張に変えることはできないので、修正の経緯を辿れば、どこかで必ず元の主張と矛盾する部分が存在します。「嘘の上塗り」とはこのことです。
論者Aが言説Sを主張する。
論者Bが言説Sを反証する。
論者Aが反証を認めながらも言説Sを主張する。
<例>
<例>
A:この議案について議決を取ることにする。
B:ダメだ。議案を一切議論せずに議決するのは会議のルールに違反している。
A:会議のルールはその通りだが、この議案については前回の会議で議論した。
B:いや、そんな議論があったことは議事録に載っていない。
A:君の言う通り議事録には載っていないが、議論はあった。
B:いや、議事録に載っていない議論は無効だ。
A:君の論理では確かにそうなのかもしれない。でも僕の論理では違う
AはBの反論を認めた上で主張を修正して元の主張を通そうとしています。ちなみに「論理」は普遍的な概念であり、「君の論理」「僕の論理」は誤りです。
<事例>蓮舫議員の二重国籍疑惑
<事例a>『週刊現代』1993年2月6日号
蓮舫氏:父は台湾で、私は二重国籍です。<事例b>朝日新聞 1993/03/16
蓮舫氏:在日の中国国籍のものとしてアジアからの視点にこだわりたい。<事例c>『CREA』 1997年2月号
蓮舫氏:国籍は台湾ですが、父のいた大陸を見てみたい。<事例d>産経新聞インタビュー 2016/09/01
蓮舫議員:台湾籍を抜いている。<事例e>読売テレビ『ウェークアップ!ぷらす』 2016/09/03
蓮舫議員:18歳で日本人を選んだ。噂が流布されるのは正直悲しい。<事例f>民主党代表選記者会見 2016/09/06
蓮舫議員:昭和60年1月に日本国籍を取得し、台湾籍の放棄を宣言している。これは私の中で動かない事実。(日本国籍の取得は)17歳だった。父と東京の台湾当局に行って台湾籍放棄の手続きをした。やり取りが台湾語でわからず、まったく覚えていない。<事例g>民主党代表選インタビュー 2016/09/07
蓮舫議員:台湾の籍はない。(過去に「国籍は台湾」と答えたことに)文の編集の過程で「だった」という部分が抜かれた。<事例h>民主党代表選インタビュー 2016/09/11
蓮舫議員:二重国籍疑惑そのものがない。<事例i>記者会見 2016/09/13
蓮舫議員:(参院議員になる前のインタビューで台湾籍を持っていると答えたことに)台湾と日本の2つのルーツを持っているという意識で発言していた。浅はかだった。(閣僚就任や代表選出馬に際し、台湾籍の有無を確認しなかったのかと問われ)日本人だから、そこの制限はないと認識している。<事例j>記者会見 2017/07/13
記者:蓮舫氏は戸籍謄本の公開についての意向があるという形で報じられましたけれど
蓮舫議員:戸籍謄本そのものというふうには言っていません。戸籍は個人のプライヴァシーに属するものであり、積極的に、あるいは差別主義者、排外主義者に言われて公開することが絶対にあってはいけない。前例にしてもいけないと思っています。私自身がすでに台湾の籍を有していないことが分かる部分をお伝えする準備がある。
政治家になる前に「私は二重国籍」「私は中国国籍」「私は台湾国籍」と宣言していた蓮舫議員は、2016年に二重国籍疑惑が発覚すると「台湾籍を抜いている」と答え、二重国籍を否定しました。しかし、その一方で9月6日に、台湾籍の離脱について関係者が台湾当局に照会し、確認が取れないままに離脱を申請、台湾旅券を返納しました。つまり、蓮舫議員は台湾旅券を持っていたことを認識していたのです。そして、9月12日に台湾当局から、台湾籍が残っている旨の連絡を受け、翌13日に台湾当局が台湾籍離脱の手続きを完了しました。この日、蓮舫氏は二重国籍状態にあったことをはじめて認めました。ちょうどタイミングよく民進党代表選の党員・サポーターによる投票が締め切られた次の日です。
その間に蓮舫議員は「噂が流布されるのは正直悲しい」「やり取りが台湾語でわからず、まったく覚えていない」「文の編集の過程で『だった』という部分が抜かれた」「二重国籍疑惑そのものがない」などという立証不可能な言い訳および虚偽を繰り返しました。これは「ヘッジの誤謬」に他なりません。
日本の国会議員の資格は日本国籍を有する者であり、二重国籍については規定されていないことから、法律上の観点から蓮舫議員は国会議員の有資格者です。しかしながら、二重国籍が規定されていないのは、そもそも二重国籍が違法であるからであり、道義上の問題は残されています。蓮舫氏が認識しているかいないかに拘わらず、少なくとも国籍法上の国籍選択義務14条に違反していたことは間違いありません。
また、民進党代表選挙の途中で二重国籍である可能性を認識していながら公表しなかったことは極めて不誠実であったと言えます。加えて、民主主義のルールが守られているかを確認する目的で国会議員としての資格を証明するよう求めた国民を「差別主義者」「排外主義者」呼ばわりしたことも大きな問題です。蓮舫議員は国民がもつ主権を代表する国会議員であるため、初当選時に遡って有資格を立証する責任があるからです。