情報操作と詭弁ー論点の誤謬

チェリー・ピッキング

情報操作と詭弁論点の誤謬論点隠蔽チェリー・ピッキング

チェリー・ピッキング

Cherry picking / Card stacking / Arrant distortion / One-sided argument

自説に好都合な情報のみを与えて自説に不都合な情報を隠す

<説明>

人が合理的に行動の意思決定を行うにあたっては、その行動によって期待される収益である【ベネフィット benefit】と期待される損失である【リスク risk】の両面を分析・比較し、その可否を判断するのが一般的です。この際に、ベネフィットあるいはリスクのみの情報しか与えられていない場合、人は合理的な判断を行なえないことになります。「チェリー・ピッキング」とは、自説に好都合な情報のみを一方的に与えて自説に不都合な情報を隠すことで、自説に好都合な意思決定をするよう人を操作するものです。

誤謬の形式

論者Aに都合がよい事実FAと都合が悪い事実FBが存在する。
論者Aは事実FBに触れず、事実FAのみを提示する。
情報受信者は事実FAのみに基づいて論者Aに都合がよい意思決定に至る。

<例>

<例>

A君:僕はイジメを許さない。さっきもイジメられていたB君を助けてあげました。
先生:さっき、C君が「A君にイジメられた」と先生に助けを求めにきましたよ。

A君は、自分に都合がよい事実のみを先生に話すと同時に、都合が悪い事実を隠し、先生に誤った評価をさせようとしました。

<事例1>韓国の反日

<事例1>TBSテレビ『サンデーモーニング』2019/11/10

青木理氏:1965年に日韓は国交を正常化したが、この時は朴正煕政権だった。朴正煕政権とは軍人出身の独裁政権だった。民主化運動を苛烈に弾圧していた。朴正煕政権と日本の自民党政権が政治的妥協したのが日韓国交正常化だ。政治的妥協だったので、いくつかデメリットが生まれた。例えば、個人の人権はなぎ倒され、個人に対する補償もされなかった。日本の植民地支配・戦争・徴用とかの事実究明も日本の責任追及もされなかった。(中略)。ところが、民主化運動を背負ってデメリットを非常に問題視する人たちが政権について今日本と葛藤が生じている。(中略)。大元をたどったら日本がヒドいことをしたのが原因で、独裁政権との政治的妥協ということを考えれば65年で解決済みと全部突っぱねるのは日本としても問題だ。だから日韓双方がここで歩み寄っていろいろ話し合ってデメリットの部分を何とか乗り越えられないかという努力を尽くす。そのためには首脳間の会談あるいは首脳間の交渉しかない。

田中秀征氏:65年から40年たって廬武鉉政権が調査委員会まで作って検討した結果、解決済みを認めた。僕はその時万歳するくらい喜んだ。当時の廬武鉉政権に今の大統領(文在寅氏)も一体化していた(大統領の側近として政権の中枢を担った)。後はとにかく今までこちらが迷惑かけたこともいろいろあるし、いろんな反省をして一生懸命やって行こうという気持ちになった。それどうなったの。彼(青木理氏)は05年のことを十分に承知の上なんだろうけど、話の中にそのことが出てこなかった。こういうことされたら付き合い切れない。今回GSOMIAを維持する可能性が高まっている。そうしたら必ず輸出規制を緩めろとか、こっちがやったんだからあんたたちもやれという話になってくる。徴用工の問題って違うんだよね。僕は(安倍)政権と同じ姿勢だ。やっぱりここはびしっとやって行かなければいけないし、05年にリベラル派が認めた。そこはどうしても忘れられないし、それやられたらたまらない。付き合えない。そんなにしょっちゅう変わられたら

青木氏は、韓国の廬武鉉政権が2005年に1965年の日韓請求権協定を検証して解決済みと認めた事実(2006年特別談話)を隠し、日本はひどいことをしたのだから1965年の日韓請求権協定で解決済みとするのは問題であると雄弁に語るとともに日本政府に妥協を促しました。しかしながら田中秀征氏に2005年の事実を指摘されると凍りついたように黙ってしまいました。青木氏は事実をつまみ食いして日本を不当に貶めようとしたのです。これは、典型的なチェリー・ピッキングです。

<事例2>赤木ファイル

<事例2a>朝日新聞 2021/06/24

■社説 赤木ファイル 佐川氏は真相を語る時

遺族の求めから1年、財務省がようやく「赤木ファイル」の開示に応じた。改ざんに加担させられたことを苦に自死した元近畿財務局職員、赤木俊夫さんが経緯を記録した文書である。

理財局との間でかわされたメールからは、繰り返し削除や修正を求められた理不尽や、赤木さんを含む財務局職員が抵抗しつつも従うほかなかった無念さがにじむ。3年前の財務省の報告書にはなかった生々しさが、問題の異様さを際立たせる。

報告書は、佐川氏が「改ざんの方向性を決定づけた」と結論づけたが、指示については認めていない。一方、ファイルにあった理財局職員のメールには、局長から「直接指示があった」と記されていた。誰が誰にどんな指示を出したのか。解明は不十分なままであり、決着済みとして再調査を拒み続ける安倍、菅政権に理はない。

問題の根底にあるのは、森友学園への国有地の不透明な値引き売却だ。安倍首相が国会で「私や妻が関係していたら、首相も国会議員も辞める」と発言。その後、佐川氏が「森友学園との交渉記録は廃棄した」と虚偽答弁をした2日後に、安倍氏の妻で、学園が開設予定の小学校の名誉校長だった昭恵氏に関する記載などの削除を求めるメールを理財局が送っていた。

<事例2b>産経新聞 2021/06/24

■【阿比留瑠比の極言御免】財務省文書改竄 忖度説の崩壊

学校法人「森友学園」への国有地売却に関する財務省の決裁文書改竄(かいざん)をめぐって、自殺した近畿財務局元職員の赤木俊夫氏が改竄の経緯をまとめて職場に残していた文書が22日、国から遺族に開示された。そこから浮かび上がってきたことは何だろうか。

まず押さえておきたいのは、赤木氏がこう明確に記していることである。

「現場として(森友学園を)厚遇した事実はない」

国会やマスコミはこの点に関して、延々と売却に際して森友学園側への配慮や当時の安倍晋三政権への忖度があったと追及してきたが、赤木氏自身がそれを否定している。この言葉からは併せて、赤木氏が国有地の売却価格の減額自体に、特に問題はないと考えていたこともうかがえる。

この問題では昨年10月、赤木氏の元上司の音声データも公表されたが、元上司も証言していた。

「安倍さんとかから声がかかっていたら正直、売るのはやめている」
「忖度みたいなのがあるみたいなことで(記載内容を)消すのであれば絶対消さない。あの人らに言われて減額するようなことは一切ない」

そして元上司は、改竄にまで追い詰められた理由をこう赤裸々に明かした。

「少しでも野党から突っ込まれるようなことを消したいということでやりました」
「少しでも作業量を減らすためにやった」

むしろ、野党の国会での追及や資料請求、ヒアリング要請の洪水を避けるためだったと示唆している。野党やマスコミの描いた強引なシナリオは、完全に決壊したといえよう。

朝日新聞などの左翼メディアや野党は「私や妻が関係していたら、首相も国会議員も辞める」という安倍首相の発言を問題視し、国有地売却には安倍首相が関係しているかのような疑惑報道を続けてきましたが、産経新聞・阿比留瑠偉記者が指摘しているように、赤木ファイルが示していた事実は、国有地売却の意思決定に影響を与えたのは「安倍氏への忖度」ではなく、作業量の減少が期待できる「野党からの追及の回避」であったことです。

しかしながら、日本の多くのマスメディアはこの事実認定を積極的に報じることなしに、現在に至っても国有地売却の原因は、官僚の安倍氏への忖度であったと結論付けています。これは明確なチェリー・ピッキングです。

<事例2c>東京新聞 2022/09/28

■社説 「安倍政治」検証は続く 分断の国葬を終えて

「安倍一強」の定着とともに発覚した森友・加計両学園や「桜を見る会」を巡る問題ではいずれも安倍氏ら政権中枢に近い人物や団体の優遇が疑われ、公平・公正であるべき行政は大きく傷ついた。

側近議員や官僚による安倍氏らへの「忖度(そんたく)」が横行し、森友問題では財務省は公文書改ざんに手を染め、改ざんを指示された担当者が自死する事態にもなった。

(中略)

これらの問題はいずれも真相解明に至っていない。安倍氏が亡くなっても不問に付さず、解明に努めるのは国会の責任だ。

反証側である政府は、赤木ファイルを公開したことで、傍証となる「ないこと」の【説明責任 accountability】を既に果たしています。もちろん「ないこと」の証明である【悪魔の証明 probatio diabolica】を政府に科すことは、反証側の人権を無視した【魔女裁判 witch trial】と言えます。東京新聞は「真相解明に至っていない」と主張するのであれば、本証側として「あること」の【立証責任 burden of proof】を果たさなければなりません。[立証責任の転嫁]こそ無責任極まりない行為に他なりません。

<事例3>ジャニーズ所属タレントの性被害報道

<事例3a>デイリー新潮 2018/04/11

■財務省トップがセクハラ発言

森友問題の収拾に追われる財務省に、トップの信じ難い醜聞が持ち上がった。福田淳一事務次官(58)が繰り返していたセクハラ発言の数々―――。(中略)

福田次官の“セクハラ体質”については複数の被害者からの証言が寄せられていて、「“彼氏はいるの?”と聞かれたので1年ほど付き合っている人がいると答えると、“どのくらいセックスしてるのか?”と聞かれ、相手が電通マンだと知ると、“それはお前、遊んで捨てられるぞ”と暴言を吐かれました」(大手紙記者)「“キスしていい?”は当たり前。“ホテル行こう”って言われた女の記者だっている」(別の大手紙記者)

記者にとってみれば、財務事務次官は貴重な情報源。福田次官の振る舞いは、自身の立場を利用した、セクシャル・ハラスメントに他ならない。さらに、以下のような会話も。

福田 胸触っていい?
記者 ダメですよ。
福田 手しばっていい?
記者 そういうことホントやめてください。
あるいは、森友問題にまつわる“真面目な”やりとりの最中でも・・・。
記者 昭恵さんの名前あったからじゃないですか?
福田 デリケートな話なんだよ。それは直接関係ないと思うけど・・・。
記者 はい。
福田 おっぱい触っていい?

これは、いわゆる「財務省セクハラ騒動」と呼ばれるものであり、テレビの情報番組やワイドショーがメディアスクラムを組んで、財務省事務次官と麻生財務大臣の人格を徹底的に攻撃しました。

<事例3b>テレビ朝日『報道ステーション』 2018/04/12

富川悠太アナ:麻生大臣は福田次官を処分しない。調査もしないということですね。

後藤謙次氏:今日の動きを見ていても麻生大臣の一連の動きに対する感度の鈍さに呆れてしまう。セクハラの問題は世界的な潮流を見てもどれほど厳しい空気が支配しているかを敏感に察知して先手を打つというのが政治家、とりわけ副総理というリーダーのやるべき態度だ。しかも森友問題で国税庁長官という財務省No.2が空席だ。その上のトップがこういう疑惑にまみれたということになれば、当然大臣とすれば人事権を行使するという場面だ。

<事例3c>TBSテレビ『サンデーモーニング』 2018/04/15

大崎麻子氏:財務省幹部のセクハラ疑惑は事実だとしたら非常に性差別的な感覚・振る舞いだと思うし、調査もしませんという姿勢はセクハラを容認する。とるに足らない問題と見ている。職場のセクハラは撲滅していかないといけない。

目加田説子氏:麻生大臣に疑いたい、自身のお嬢さんなどが同じようにセクハラ行為を受けて看過できるのか。あまりにも他人事だし、被害者に対して寄り添う、あるいは悪いことをしてしまったという意識を組織としても感じられない。政府のトップが率先して悪しき前例を作っている。泣き寝入りしなさいと。いくら言ったって最終的には報われないと。本当に罪深い。

そんな中、セクハラに関連する別件のスキャンダルが発覚しました。

<事例3d>テレビ朝日『報道ステーション』 2018/04/25

富川悠太アナ:人気アイドルグループTOKIOの山口達也メンバーが女子高校生にわいせつな行為をしたとして警視庁に書類送検されていたことがわかりました。捜査関係者によると、山口メンバーは今年の2月に港区六本木の自宅で無理やりキスをした疑いが持たれています。山口メンバーはテレビの仕事を通じて女子高校生と知り合ったということです。山口メンバーは取り調べに対して大筋で容疑を認めているということです。所属事務所は「お酒を飲んで被害者の方のお気持ちを考えずにキスをしてしまいましたことを本当に申し訳なく思っております。被害者の方には誠心誠意謝罪し和解させていただきました」とコメントしています。次です。

この間たった57秒、論評抜きの報道でした。芸能人は国民にとって私的な存在ではありますが、その大衆への影響力は極めて高く、社会問題として取り上げるのには高い報道価値があると言えます。しかしながら、「山口メンバー」こと山口容疑者の所属事務所がテレビの視聴率獲得に直結する芸能人を多く抱えているジャニーズ事務所であるということなのか、未成年に対するわいせつ行為であるにも拘らず、報道は極めて淡白で事務的なものでした。財務省セクハラ事案で女性の人権を問題にしていた『報道ステーション』が加害者の所属集団によって明らかな待遇差別を行っていることがわかります。

1週間後、『報道ステーション』は、山口達也氏の不起訴処分について報じ、最後に次のように付け加えました。

<事例3e>テレビ朝日『報道ステーション』 2018/05/01

富川悠太アナ:ジャニーズ事務所のジャニー喜多川社長がコメントを発表しています。「全ての所属タレントの親としての責任を負いながら、今後も彼らが人として成長できますよう支援し続けてまいる所存でございます。」とお詫びとともにコメントしました。ジャニー北川社長がこのようにコメントを発表するのは極めて異例のことだということです。

口頭によるセクハラ疑惑を理由に麻生大臣が辞めるべきであるとするテレビの論調が支配した中で、肉体による強制わいせつ事件を起こしたタレントの所属会社のジャニー喜多川社長に対しては「社長がこのようにコメントを発表するのは極めて異例のこと」としてありがたく紹介しています。政府に不祥事があるとマスメディアが必ず口にする「民間ならトップは責任をとって辞める」というのは、都市伝説に過ぎないと言えます(笑)。さらに翌日には、『報道ステーション』は長時間を割いてTOKIOの謝罪会見を放映しました。

<事例3f>テレビ朝日『報道ステーション』 2018/05/02

富川悠太アナ:TOKIOの皆さんは福島を応援し続けていたということもありまして会見で福島のことに話が及びますと、より皆さん神妙な面持ちで異口同音「可能であればこれからも支援をさせてもらいたい」と話していました。

まず、TOKIOのメンバーが、山口氏の強制わいせつ行為に対して国民に謝罪することには何の意味もありません。TOKIOのメンバーには何の過失もなく、このような会見を行うこと自体が不合理です。あえて言えば、この会見は、TOKIOのイメージダウンを解消するという目的においてのみ意味があります。そしてテレビがこの会見を流す意味は、視聴率確保のための優良コンテンツであるTOKIOの商品価値を落とさないことと、人気タレントが多数所属しているジャニーズ事務所に対して貸しを作るということに他なりません。腫れ物に触るように語る富川アナの言葉にその意図が溢れています。テレビ朝日にとっては、セクハラに対する本質的議論よりはTOKIOの今後の方が大きな関心事と言えます。

さて、この1年後、ジャニー喜多川社長はくも膜下出血で入院して亡くなりましたが、この間にテレビ朝日『羽鳥慎一モーニングショー』玉川徹氏はまるで媚びへつらうようにジャニー喜多川社長を崇拝するような称賛の言葉を連発しました。

<事例3g>スポーツ報知 2019/07/02

■玉川徹氏、くも膜下出血で入院のジャニー喜多川氏を「唯一無二。日本の芸能界にとってその重みって凄い」

コメンテーターで同局の玉川徹氏はジャニー氏について「同じようなシステムの会社ってないですよね。唯一無二ですよね。その重みって凄いことなんだと思います。日本の芸能界にとって」とコメントしていた。

<事例3h>スポーツ報知 2019/07/10

■玉川徹氏、亡くなったジャニー喜多川社長を「50歳を超えてから花開いた。うらやましい人生を歩まれた」

番組コメンテーターで同局の玉川徹氏は「まだまだやりたいことは、おありになったとはもちろん思うんですけども、最後の最後まで現役で、考えてみると自らの理想の世界がおありになったと思うんですね。それがジャニーズっていう世界観だと思うんですけど。それが年を経るごとにどんどん花開いたっていう印象がありますね」と指摘した。

しかしながら、そのジャニー喜多川社長は、ジャニーズ事務所のタレントに性的な加害を与えたことが2003年に東京高裁で明らかになっており、その経営システム自体に大きな問題があることは自明でした。テレビ局の社員がそのことを知らないわけがありません。しかし彼らは、この件について「報道しない自由」を存分に行使して、テレビ局の利益に繋がるジャニー喜多川氏を糾弾することは一切なかったのです。

この日本のテレビメディアの欺瞞を打ち砕いたのが、2023年3月7日の英国BBCによる衝撃の報道でした。

<事例3i>BBCニュース 2023/03/07

■加害が明るみに……それでも崇拝され 日本ポップス界の「捕食者」

ジャニー喜多川氏は日本のポップカルチャー、日本のアイドル文化を作り上げた立役者だった。喜多川氏が創設した男性のみのタレント事務所「ジャニーズ事務所」は、人気男性アイドルグループを次々と世に送り出した。「チャート1位を獲得した歌手を最も多くプロデュースした人物」としてギネス世界記録にも認定された。「最も多くのナンバーワン・シングルをプロデュースした人物」、さらには「最も多くのコンサートをプロデュースした人物」にも認定されている。

一方で、喜多川氏には性的搾取の疑惑が、常につきまとっていた。しかも、密室でささやかれただけではない。全国的な報道機関が取り上げ、その一部は民事裁判で認定された。それでも、喜多川氏は晩年まで国の宝とされた。2019年に87歳で亡くなった後も、今なお崇拝されている。

(中略)

ジャニーズ事務所のタレントを起用すれば、視聴者も読者も広告費も稼ぐことができる。ジャニーズ事務所の若手グループを売り出せば、事務所との関係は良くなり、ジャニーズの大物人気スターの出演を確保しやすくなるかもしれない。一方で、ジャニーズ事務所や所属アイドルについて否定的なことを言えば、逆の効果が待っている。ジャニーズ帝国からはじき出され、帝国が生み出す収益の恩恵を受けられなくなる。

ほとんどの日本メディアが、喜多川氏の問題行為について触れることすらしなかったのは、そのためかもしれない。

(中略)

東京高等裁判所は2003年7月の判決で最終的に、文春の報道について、「セクハラ行為」に関する記事はその重要な部分において真実であることの証明があったと認めた(ただし、「少年らに対し、合宿所などで日常的に飲酒、喫煙をさせている」という記事の主張は、事実と異なると裁判所は認めた)。ジャニーズ側は上告したものの、最高裁は2004年2月に上告を棄却。東京高裁判決が確定した。

だがこの判決も黙殺された。名誉毀損訴訟は刑事裁判につながらなかった。喜多川氏は訴追されることなく、亡くなる2019年まで、ジャニーズ事務所の社長を続けた。

さらに元ジャニーズタレントの岡本カウアン氏がジャニー喜多川社長の性加害を証言する衝撃の告白をします。

<事例3j>弁護士ドットコム ニュース 2023/04/12

■ジャニー氏の「性加害」証言、沈黙してきたメディアに責任は? NHKディレクターの問いかけ

元ジャニーズJr.の岡本カウアンさんが、ジャニーズ事務所の創業者、故ジャニー喜多川さんから性被害を受けたと告白した4月12日の記者会見では、ジャニーさんの一連の問題を報じない国内のテレビや新聞など大手メディアの問題もまたクローズアップされた。

岡本さんは会見場所として、日本外国特派員協会(東京・丸の内)を選んだ背景として「(日本の大手メディアは)取り上げないだろうと覚悟して話しています」と述べた。

そんな中で取材に訪れたNHK報道局のディレクターが「もし大手(メディア)が報じていたら、ジャニーズ事務所に入所していなかったか?」などと問いかける場面があった。

岡本さんは「たぶんなかったんじゃないかな」と回答した。沈黙していた大手メディアに何か変化はあるのか。

この日の会見で、岡本さんは中学3年生(15歳)だった2012年から2016年までジュニアとして活動したと説明。岡本さんによると、入所翌月にジャニー氏から、初めて性的行為をされて、退所まで計15?20回あったという。

ジャニーさんによるジュニアへの性加害をめぐっては、1999年に『週刊文春』が大きく報じた。ジャニーズ事務所と文春が裁判で争い、東京高裁がその重要な部分で真実であることの証明があったと認めている。

これが事実とすれば、同性の未成年に対して、優越的な立場を持つ者が行った性加害の告白です。しかしながら、日本のテレビ局は沈黙を続けたのです。

<事例3k>The Audience 2023/04/13

■『DayDay.』『羽鳥慎一モーニングショー』『あさイチ』でジャニー喜多川「性加害」言及…岡本カウアン告発の行方

12日午前、日本外国特派員協会が主催する記者会見で、元ジャニーズJr.の岡本カウアンさんが、ジャニーズ事務所創業者で前社長であるジャニー喜多川さんからの「性被害」について告発した。(中略)

13日朝の情報番組、山里亮太さんと武田真一さんがダブル司会の『DayDay.』(日本テレビ系)、羽鳥慎一さんが司会の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)、博多華丸さん、博多大吉さん、鈴木奈穂子アナウンサーがキャスターを務める『あさイチ』(NHK)での言及は一切なかった。

岡本さんの12日の会見場には、NHKスタッフ、日本テレビとテレビ朝日のカメラの姿が確認されていたにもかかわらずである。

日本のテレビは、ことあるごとに疑惑のスケープゴートに対して、事実ではなく疑惑を根拠にして徹底的に糾弾してその人格を蹂躙してきました。例えば、言葉によるセクハラを行ったとされる財務省事務次官に対しては、極悪人のように罵り、辞職に追い込みました。一方で肉体的な関係を事実上強要したと考えられる芸能事務所社長に対しては、その加害を見て見ぬふりをして「うらやましい人生」を送ることに協力しました。これは、とんでもないチェリー・ピッキングです。

このように人間を自らの都合で差別する日本のテレビは観るのも汚らわしい存在であると考える次第です。