情報操作と詭弁ー論点の誤謬

事実の歪曲

情報操作と詭弁論点の誤謬論点歪曲事実の歪曲

事実の歪曲

Distortion of fact

自説に好都合な偽情報を流布することで事実を歪曲する
他説に不都合な偽情報を流布することで事実を歪曲する

<説明>

【事実 fact】と異なる誤った情報を【誤情報 misinformation】と言います。誤情報のうち悪意をもって意図的に【改竄 falsification】あるいは【捏造 fabrication】された情報を【偽情報 disinformation】と言います。「事実の歪曲」とは偽情報の流布のことであり、自説の肯定あるいは他説の否定を行うために誤情報を意図的に流布する行為です。ここに「改竄」とは存在する事実を歪めること、「捏造」とは存在しない事実を造ることを意味します。

なお、偽情報を含む誤情報の流布のことを【フェイクニュース fake news】と言います。すなわち、偽情報の流布はフェイクニュースの一つです。フェイクニュースのことを和製英語で「デマ」とも言いますが、これは扇動を意味する英語の【デマゴーグ demagogue】とは本質が異なります。また、論敵の言説を歪曲する【ストローマン論証 strawman fallacy】は事実の歪曲の一つです。

誤謬の形式

Pを前提にして結論Cを主張する。
※実際にはPは偽情報である。

<例>

<例>
A:もしもし、今、フランスのパリにいるんだけど、すごいだろ!
B:あの~ 20分前に青物横丁であなたの姿を見かけたけど。
A:あ、それ双子の弟。
B:ウソでしょ。ほくろがあなたと同じ位置にあったけど。
A:もしもし…もしもし…パリだけあって電話が遠いな。(電話が切れる)

事実の歪曲は、事実との矛盾を解消できないため、一つの歪曲に止まらずに次々と連鎖していくのが特徴です

<事例1>朝日新聞『サンゴ落書き』報道

<事例1>朝日新聞 1989/04/20

■サンゴ汚したK・Yってだれだ

これは一体なんのつもりだろう。沖縄・八重山群島西表島の西端、崎山湾へ、長径八メートルという巨大なアザミサンゴを撮影に行った私たちの同僚は、この「K・Y」のイニシャルを見つけたとき、しばし言葉を失った。

巨大サンゴの発見は、七年前。水深一五メートルのなだらかな斜面に、おわんを伏せたような形。高さ四メートル、周囲は二十メートルもあって、世界最大とギネスブックも認め、環境庁はその翌年、周辺を、人の手を加えてはならない海洋初の「自然環境保全区域」と「海中特別地区」に指定した。

たちまち有名になったことが、巨大サンゴを無残な姿にした。島を訪れるダイバーは年間三千人にも膨れあがって、よく見るとサンゴは、水中ナイフの傷やら、空気ボンベがぶつかった跡やらで、もはや満身傷だらけ。それもたやすく消えない傷なのだ。

日本人は、落書きにかけては今や世界に冠たる民族かもしれない。だけどこれは、将来の人たちが見たら、八〇年代日本人の記念碑になるに違いない。百年単位で育ってきたものを、瞬時に傷つけて恥じない、精神の貧しさの、すさんだ心の……。

にしても、一体「K・Y」ってだれだ。

「サンゴ汚したK・Y」というのは記事を作成した朝日新聞のカメラマンでした。自作自演でセンセーショナルな事実を捏造し、朝日新聞の売り上げに貢献したのです。結局、捏造がバレて朝日新聞社の社長が引責辞任するに至りました。

<事例2>朝日新聞『吉田証言』報道

<事例2a>朝日新聞 1991/08/11

■元朝鮮人従軍慰安婦 戦後半世紀 重い口開く
思い出すと今も涙

日中戦争や第二次大戦の際、「女子挺身隊」の名で戦場に連行され、日本軍人相手に売春行為を強いられた「朝鮮人従軍慰安婦」のうち、一人がソウル市内に生存していることがわかり、「韓国挺身隊問題対策協議会」(尹貞玉・共同代表、十六団体約三十万人)が聞き取りを始めた。同協議会は十日、女性の話を録音したテープを朝日新聞記者に公開した。テープの中で女性は「思い出すと今でも身の毛がよだつ」と語っている。体験をひた隠しにしてきた彼女らの重い口が、戦後半世紀近くたって、やっと開き始めた。

朝日新聞の「従軍慰安婦報道」は、大東亜戦争時の朝鮮の済州島において若い女性を強制連行する「慰安婦狩り」を行って「従軍慰安婦」にしたとする吉田清治氏の証言を客観的証拠なく肯定したものです。吉田証言の現場である済州島の済州新聞は1982年に住民の追跡調査を行った結果「慰安婦狩りは事実ではない」と報じ、その後に吉田氏自身も事実の捏造・改竄を認める発言を行いましたが、朝日新聞は1994年までに計16本にわたる「吉田証言記事」を掲載し、訂正記事を掲載することはありませんでした。この一連の朝日新聞記事が吉田証言の信憑性を高めたことは疑いの余地もありません。吉田証言は、国連人権委員会のクマラスワミ報告(女性に対する暴力とその原因及び結果に関する報告書)において証言の一つとして採用され、捏造された慰安婦狩りは国際社会で事実認定されてしまいました。そんな中、突然2014年8月5日に朝日新聞は虚偽を認めた訂正記事を掲載したのです。

<事例2b>朝日新聞 2014/08/05

■慰安婦問題の本質 直視を

「疑問」
日本の植民地だった朝鮮で戦争中、慰安婦にするため女性を暴力を使って無理矢理連
れ出したと著書や集会で証言した男性がいました。朝日新聞は80年代から90年代初
めに記事で男性を取り上げましたが、証言は虚偽という指摘があります。

「読者のみなさまへ」
吉田氏が済州島で慰安婦を強制連行したという証言は虚偽だと判断し、記事を取り消
します。当時、虚偽の証言を見抜けませんでした。済州島を再取材しましたが、証言を
裏付ける話は得られませんでした。研究者への取材でも証言の核心部分についての矛盾
がいくつも明らかになりました。

朝日新聞は、吉田証言が虚偽であることに気付いていながら、1980年の最初の記事から34年、そして1994年の最後の記事からが20年が経過するまで、記事の訂正を一切行いませんでした。その無責任なスタンスに大きな批判が集まりましたが、訂正後しばらくすると、次のような記事を書いて自己正当化(責任は認めるが加害は認めない)を行います。

<事例2c>朝日新聞 2014/08/28

■慰安婦問題 核心は変わらず

朝日新聞が今月5、6日に掲載した慰安婦問題の特集をきっかけに、さまざまな議論が起きている。慰安婦を強制連行したとする吉田清治氏の証言を報じた記事を取り消したことを受け、慰安婦問題で謝罪と反省を表明した河野洋平官房長官談話(河野談話)の根拠が揺らぐかのような指摘も出ている。(中略)。河野談話発表の約4カ月前には、当時の谷野作太郎外政審議室長が参院予算委員会で「強制は単に物理的に強制を加えることのみならず、脅かし、畏怖させ本人の自由な意思に反した場合も広く含む」と答弁した。河野談話も「募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた」と結論づけ、吉田氏が言うような「強制連行」ではなく、女性たちが自由意思を奪われた「強制性」を問題とした。

ところが、そんな正当化も束の間、後述する『吉田調書』の虚報が発覚すると、慰安婦報道でも平謝りを始めます。

<事例2d>朝日新聞 2014/09/11

朝日新聞社が過去の慰安婦報道で、韓国・済州島で慰安婦を強制連行したとする吉田清治氏(故人)の証言を虚偽と判断し、関連の記事を取り消したことについて、木村社長は「訂正が遅きに失したことについて読者のみなさまにおわびいたします」と語りました。

そして12月23日、日本社会からの大きな批判を承けて設置した第三者委員会の報告を公表しました

<事例2e>朝日新聞 2014/12/23

■記事を訂正、おわびしご説明します
朝日新聞社 慰安婦報道、第三者委報告書

慰安婦問題を報じた本紙記事について、第三者委員会から不正確で読者の誤解を招くものがあるといった指摘を受けました。これまでの訂正・記事取り消しなどに加え、独自に検討を進めてきた結果を踏まえて必要な訂正をします。読者の皆様におわびし、理由を説明いたします。訂正などにあたってのわかりやすい提示方法について今後も検討し、改善を重ねます。

以上が事態の経過ですが、NHKでこの問題をめぐる報道にかかわった経験をもつ池田信夫氏は、著書で次のように述べています。

<事例2f>池田信夫氏『朝日新聞 世紀の大誤報 慰安婦問題の深層』 2014

私は男の強制連行を取材し、同僚は慰安婦の取材をした。8月14日に慰安婦がソウルで記者会見し、同僚はそれを取材した。それは戦時中の未払い賃金を払えという話で日韓条約で終わった話だ。当時はNHKも含めて、ほとんどのメディアが相手にしなかった。NHKは『ニュース21』で10分くらい特集したが、その後は追いかけていない。(中略)

この事件は、慰安婦という問題の深刻さもさることながら、それを報じた朝日新聞の大規模な誤報事件が、社会に大きな反響を呼んだ。マスメディアの誤報はそう珍しいことではないが、30年以上にわたってそれを組織的に隠蔽してきたことは、個々の記者の失敗とは言えない構造的な問題であり、それは日本のメディア全体にも通じる。(中略)

朝日が誤報を謝罪した吉田調書と慰安婦問題には、共通点がある。それは「正義のためなら事実を曲げてもいい」という社風である。

この「正義のためなら」という崇高な理由が、自己正当化(責任は認めるが加害は認めない)の機会を与え、虚報の免罪符になっていることは想像に難くありません。

<事例3>朝日新聞『吉田調書』報道

<事例3a>朝日新聞 2014/05/20

■政府事故調査の『吉田調書』入手
所長命令に違反 原発撤退 福島第一所員の9割

東京電力福島第一原発所長で事故対応の責任者だった吉田昌郎氏(2013年死去)が、政府事故調査・検証委員会の調べに答えた「聴取結果書」(吉田調書)を朝日新聞は入手した。それによると、東日本大震災4日後の11年3月15日朝、第一原発にいた所員の9割にあたる約650人が吉田氏の待機命令に違反し、10キロ南の福島第二原発へ撤退していた。その後、放射線量は急上昇しており、事故対応が不十分になった可能性がある。東電はこの命令違反による現場離脱を3年以上伏せてきた。

朝日新聞は未公開の「吉田調書」を独自に入手し、自らが事実を報じていることを無言の前提として、福島第一原発事故の対応における東電の企業倫理と現場職員の職業倫理を断罪しました。原発事故を問題視させることが自らの論調を肯定することに繋がる朝日新聞は、当時、連載記事『プロメテウスの罠』などを通して反原発キャンペインを大々的に展開していました。自らの安全を優先する現場職員が命令違反を犯して無責任に現場から撤退したことを示唆するこの記事は日本社会に大きなインパクトを与えました。

しかしながら、実際の「吉田調書」には、職員が命令違反をして撤退したとする記述は存在しませんでした。後に「吉田調書」を入手した産経新聞は朝日新聞の認識を次のように否定しました。

<事例3b>産経新聞 2014/08/18

■吉田所長、「全面撤退」明確に否定 福島第1原発事故

平成23年3月の東京電力福島第1原発事故に関し、産経新聞は17日、政府の事故調査・検証委員会が事故発生時に所長として対応に当たった吉田昌郎氏(25年7月9日死去)に聞き取り調査してまとめた「聴取結果書」(吉田調書)を入手した。吉田氏は東電が事故発生3日後の14日から15日にかけて第1原発から「全面撤退」しようとしていたとする菅直人首相(当時)らの主張を強く否定し、官邸からの電話指示が混乱を招いた実態を証言している。吉田氏は一方で、現場にとどまった所員には感謝を示すなど、極限状態での手探りの事故対応の様子を生々しく語っている。(中略)

朝日新聞は、吉田調書を基に5月20日付朝刊で「所長命令に違反 原発撤退」「福島第1 所員の9割」と書き、23年3月15日朝に第1原発にいた所員の9割に当たる約650人が吉田氏の待機命令に違反し、10キロ南の福島第2原発へ撤退していたと指摘している。ところが実際に調書を読むと、吉田氏は「伝言ゲーム」による指示の混乱について語ってはいるが、所員らが自身の命令に反して撤退したとの認識は示していない。また、「退避」は指示しているものの「待機」を命じてはいない。反対に質問者が「すぐに何かをしなければいけないという人以外はとりあえず一旦」と尋ねると、吉田氏が「2F(第2原発)とか、そういうところに退避していただく」と答える場面は出てくる。

朝日新聞は「報じ手」と「読み手」の間に存在する情報の格差である【情報の非対称性 information asymmetry】の下に東電と現場職員を根拠なく貶める「命令拒否」という虚偽の情報を捏造して報じたのです。さらに、朝日新聞は事実の歪曲を産経新聞上で指摘したジャーナリストの門田隆将氏の記事が朝日新聞に対する名誉棄損に当たるとして抗議書を送りました。

<事例3c>産経新聞 2014/08/19

■【吉田調書】門田隆将氏、朝日新聞抗議に「全く的外れ!」
「自らの姿勢を問い直してほしい」

東京電力福島第1原発の吉田昌郎元所長の調書に関連し、18日付産経新聞に掲載されたジャーナリスト門田隆将氏の寄稿「朝日は事実曲げてまで日本人をおとしめたいのか」(東京本社版)について、朝日新聞社は同日、名誉と信用を傷つけられたとして、本紙の小林毅・東京編集局長と門田氏あてに抗議書を送った。

論理的に考えれば、朝日新聞は情報の非対称性がその後も継続することを念頭に入れ、自らの名誉と信用を嘘をついてまで守るために抗議書を送ったと考えることができます。ところが、そんな工作も束の間、日本政府が「吉田調書」を全面公開した9月11日に平謝りを始めます。

<事例3d>朝日新聞 2014/09/11

■吉田調書「命令違反で撤退」記事取り消します 朝日新聞

朝日新聞社は、政府が非公開としていた「吉田調書」を独自に入手し、5月20日付1面などで「東日本大震災4日後の2011年3月15日朝、福島第一原発にいた東電社員らの9割にあたる約650人が吉田所長の待機命令に違反し、10キロ南の福島第二原発に撤退した」と報じました。

しかし、社内で精査した結果、「命令違反で撤退」という記述と見出しは裏付けがない、と判断しました。多くの所員らが吉田所長の命令を知りながら第一原発から逃げ出したような印象を与える間違った記事でした。

取材班は吉田調書を読み解く過程で評価を誤り、取材源の保護に気をつかうあまり情報を共有していた記者が少なく、チェック機能が十分働かなかったことなどが原因と判断しています。

さらに朝日新聞は、自己保身のために罪を被せた産経新聞と門田隆将氏に対し、抗議を撤回して謝罪しました。

<事例3e>サンスポ 2014/09/14

■朝日新聞、産経新聞社などに謝罪 「抗議したこと自体が誤り」

朝日新聞社は13日、東京電力福島第1原発の吉田昌郎元所長の聴取結果書(吉田調書)に関する記事を取り消したことを受け、同社が抗議書を送っていた産経新聞社とジャーナリストの門田隆将氏に対し、抗議を撤回し、おわびした。同日付の朝日朝刊1面によると、週刊ポスト(小学館)、写真週刊誌「FLASH」(光文社)にもおわびの意思を伝えたという。

朝日は「抗議は前提となる事実を欠くものであり、抗議したこと自体が誤っておりました」としたうえで、抗議書を撤回し、朝日8月19日付朝刊「産経記事巡り本社が抗議書」の記事を取り消した。

マスメディアは、情報の非対称性を悪用することで、国民に虚偽の情報を与えて倫理操作することが可能な存在であり、善意の存在に罪を被せるという強力な言葉の暴力の行使が可能な存在であるという厳然たる事実に留意する必要があります。

<事例4>ひるおび『小池都知事との握手拒否』報道

都議選の翌日である2017年7月3日、TBSテレビ「ひるおび」は都議選の結果について話題にしました。司会者の恵俊彰氏から都議選の結果に対する見解を質問されたコメンテイターの三雲孝江氏は次のように回答しました。

<事例4a>TBSテレビ『ひるおび』 2017/07/03

三雲孝江氏:やっぱり初登庁の時のあのイメージの悪かった方達がみんな落ちたというか、あのイメージのまんまちょっと来ちゃったんだなと。

恵俊彰氏:「写真撮らない」って方、落ちちゃったんでしょ。

三雲孝江氏:落ちました。はい。

このやり取りで出演者が取り上げているのは、2016年8月2日に東京都庁に初登庁した小池百合子東京都知事が、川井重勇東京都議会議長に対して知事就任の挨拶に出向いたときに、マスメディアからリクエストされた写真撮影を川井議長が断ったとする事案です。この当時、ワイドショーはこの他愛もないやり取りの映像を異常なまで何度も繰り返し、川井議長を悪魔化すると同時に小池都知事を東京都庁という伏魔殿にたった一人で切り込んだヒロインであるかのように演出しました。いわゆる『小池劇場』です。

三雲氏の見解は「都知事との写真撮影を拒否すると、イメージが悪い人間として認定されて都議選に落選する」という理不尽な原理に共感するものです。ただ、これは個人の見解であるので表現の自由に守られる発言であると考えます。問題はこの後に展開された報道です。

<事例4b>TBSテレビ『ひるおび』 2017/07/03

アナウンサー:中心人物となるべき人が落選しているんですね。それがこちら中野区の川井都議会議長。まぁ、この川井議長なんですけれども、去年8月小池知事就任あいさつで握手拒否もあったということなんですけれども、それをごらんいただきましょうか。

ここで画面に映ったのが、都庁内において川井議長に歩み寄る小池都知事の姿です。体の後ろに手を組む川井議長に対して、小池都知事は手を差し出したところで画面が切り替わり、小池都知事はひきつった笑顔を見せながら差し出した手を元に戻しました。

時事通信社の報道映像のスクリーンショートを引用

すなわち画面を見る限り、小池都知事は握手を拒否されているように見えます。そして報道陣が「記念撮影などを・・・」というリクエストを出すと川井議長は「あなたの要望に応える必要はないんだから」と回答し、記念撮影なしに小池都知事が戻っていく映像が映し出されました。この映像を受け、スタジオの出演者は、川井議長の人格を徹底的に貶めました。

<事例4c>TBSテレビ『ひるおび』 2017/07/03

恵俊彰氏:ね~、三雲さん、これ印象的でしたもんね。

三雲孝江氏:ね~、握手くらいすればいいじゃないね~。ご挨拶なんだからね。しっぺ返しですね。

恵俊彰氏:それだけやっぱり厳しいんですね。今回はね。

田崎史郎氏:そうですね。だからやっぱりテレビでわりとこう取り上げられてしまった人が次々と落ちてますよね。

恵俊彰氏:印象的ですものね。

田崎史郎氏:印象的です。

恵俊彰氏:それがやっぱ伊藤さんまだ続いてたんですね。この熱が。

伊藤惇夫氏:だからやっぱり頭の黒いネズミたちが落っこったということですね。

以上のトークは川井議長が小池都知事の握手を拒否したということが前提で進められたものです。印象で都議会選挙が行われることには大きな問題があるかと思いますが、この一連の報道における最大の問題は何かといえば、映し出された映像とは異なり、実際にはこのとき川井議長と小池都知事は丁寧に会釈を交わしながらしっかりと握手も交わしていたことです。

時事通信社の報道映像のスクリーンショートを引用

「ひるおび」はこの握手の映像(約12秒)をカットして映像をつなぐことで、まるで川井議長が握手を拒否したような印象映像に改竄し、「握手拒否もあった」と歪曲したのです。番組は映像を編集する際に両者が握手を交わしていたことを把握していたことは自明なので、まさに「ひるおび」は意図的にフェイクニュースを流して事実を歪曲していたと言えます。

実際に小池都知事と川井議長が握手していたことを知らない視聴者にとってみれば、握手を拒否した川井議長は極悪の頭の黒いネズミであり、わざわざ挨拶に出向いたにも拘らず握手を拒否された小池都知事は可哀想なヒロインであると言えます。ところがこのやり取りはまったくの歪曲だあったのです。『ひるおび』は、このことがネットで指摘されると「拒否したのは握手ではなく写真撮影でした」と謝罪しましたが、これは加害を認めるが責任は認めない「弁解」であり、国民を欺いたものと考えられます。彼らは不自然に握手のシーンだけをカットした改竄映像を見せて「握手拒否もあった」とアナウンスしたのです。